映画レポ|何年経とうと最愛の映画『Mommy』

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こんにちは。
映画大好きまにしです。

19歳という若さではじめて監督を務め、以降鮮烈な作品で世の中を圧倒してきたカナダ生まれの若き天才がいた。
彼の名前はグザヴィエ・ドラン。
私がこの世で最も愛する監督である。

さまざまな意欲的な賞を総なめにしてきた彼の代表作こそが、第67回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した『Mommy』だ。

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Photo credit : Shayne Laverdiêre / © 2014 une filiale de Metafilms inc.

今年で日本公開10周年を迎えた本作は、ちょうど今、ミニシアターでのリバイバル上映などで盛り上がりをみせているらしい。

そんなお祭りに乗じて、ここにひっそりと私の愛を吐露しようと思う。

◾️あらすじ

とある世界のカナダでは、2015年の連邦選挙で新政権が成立。2ヶ月後、内閣はS18法案を可決する。公共医療政策の改正が目的である。中でも特に議論を呼んだのは、S-14法案だった。発達障がい児の親が、経済的困窮や、身体的、精神的な危機に陥った場合は、法的手続きを経ずに養育を放棄し、施設に入院させる権利を保障したスキャンダラスな法律である。ダイアン・デュプレの運命は、この法律により、大きく左右されることになる。

グザヴィエ・ドラン監督『Mommy/マミー』 オフィシャルサイト
カンヌ国際映画祭2014審査員特別賞受賞。美しき俊英グザヴィエ・ドランの監督最新作にして最高傑作『Mommy/マミー』。新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー。

◾️何度も思い出そう、スティーヴとの時間を

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Photo credit : Shayne Laverdiêre / © 2014 une filiale de Metafilms inc.

私にとって『Mommy』は、何度も何度もふとしたときに思い出してしまう映画だ。そして何度も何度もまた観る。

カートをぶん回すスティーヴ、世界が広がった美しい景色、叶わなかった理想の世界…。

はじめて観たとき、“COLORBLIND”が流れている劇中で、スティーヴはヘッドホンで自分の好きな曲を聞いているシーンが印象的だった。

I am colorblind(僕の世界には色がない)
Coffee black and egg white(珈琲の黒と卵の白だけ)
Pull me out from inside(ここから連れ出してくれ)
I am ready(準備はできている)

楽しそうな彼の映像に、なぜ“COLORBLIND”?

そのとき、違和感にやっと気づく。
世界の外側と内側にはギャップがあるのだ。
その事実に、物凄く泣きたくなった。

一方、“wonderwall”のときはみんなで同じ曲を聴いているかのようで、希望であふれていて、うれしくて心がいっぱいになる。
カイラありがとう、世界をいっぱいにしてくれてありがとう、って気持ちだ。

カイラは私にとって、女神さまをあらわすものになった。

でもここで察するのは、物語はまだ終わらないということ。

憎くも次画面が広がったのは、理想の世界。なんて演出だと思った。胸がギタギタにされた。目の前が真っ暗になった。

だから私は、また『Mommy』を観る。スティーヴ、会いにきたよ。また一緒にあのときの楽しい時間を思い出そうって。

◾️生きづらさについて思うこと

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Photo credit : Shayne Laverdiêre / © 2014 une filiale de Metafilms inc.

一般的にADHDは、注意力が足りなかったり、衝動的で落ち着きがないといった性質で知られている障がいである。
はっきりとした原因があるわけではなく、先天的な脳の成長の偏りにより生じると考えられている。

この物語のスティーヴには、衝動性や落ち着きのなさに加え、そこから派生して暴力性も見られる。
私は彼ではないから、どうしても完全に理解することはできないが、“生きづらさ”を抱える身としては共感する部分も多い。

わからないけど、生きづらいからこそ愛情を求める、みたいなところが私にはある。

運動も勉強もできない、同世代の子と比べてイケてない。他に上手な子がいっぱいいるのに、何者でもない自分を、親は、恋人は、どうして私を愛してくれるのか。

真実が嘘に思えて、愛情が捻じ曲がっていく。つい試すような行為ばかりしていくうちに、いつしか本当に嫌われてしまう。何も信じられなくなり、また自分が嫌いになる。

思い返せば、思春期から大人になるまではそんな負のスパイラルから抜け出せずにいたような気がする。

そんな捻じ曲がった愛情を求めるスティーヴ(を通じたドランくん)が昔の私に重なって、幸せにしてあげたいなあと、『Mommy』を見るたびにしみじみ悲しくなるわけである。

◾️余談|結婚記念日をドランくんの誕生日に

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ドランくんを愛し、26年一生懸命に生きてきた私は、晴れてこの度結婚することになった。

映画好きな恋人と籍を入れるのは、ドランくんの誕生日である3/20。日本では春分の日で、とても美しい日だと思っている。

特別な日に好きな映画を観る習慣があるので、きっといつか3/20に『Mommy』を観る日もくるのだろう。そんな新しい特別な日に、ドランくんの誕生日も祝えてハッピー。

『Mommy』を観れば、スティーヴにまたいつでも会いに行ける。何度観たところで私は彼を外に出してあげることができないけど、彼はまた何度でも自分で外に飛び出していくのだから大丈夫だ。

触れるとじんわり温かい思い出を、映画からいつももらっている。現実で経験したことと同じように、思い出は私を豊かに支えてくれる。

ありがとう、また20周年も祝わせてね。
自由はきっとあると信じて。

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